平成25年版消費者白書

第2部 消費者政策の実施状況

第1章 消費者の権利の尊重と消費者の自立の支援

第2節 消費者の自主的かつ合理的な選択の機会の確保

1 .消費者取引の適正化を図るための施策

( 5 )金融分野の取引の適正化

ア.クレジット取引等への対応

①「割賦販売法(後払分野)に基づく監督の基本方針」の策定

経済産業省では、割賦販売法における監督行政の透明性及び均一性の確保、信用購入あっせん業者による適切な事業運営の促進を目的として、監督業務の考え方や手法を示した監督の基本方針を策定し、2012年10月に公表しました。また、監督の基本方針について、全国11か所で事業者向けの説明会を開催し、事業者へ周知徹底を図りました。

②携帯電話機の分割払いに係る注意喚起の実施

スマートフォン等の比較的高額な携帯電話機の普及に伴い、携帯電話機本体の分割払いが広く行われるようになってきましたが、それに伴い、分割払い代金の滞納が増加しています。そのため、経済産業省では2012年12月に、①携帯電話を分割で購入する契約はクレジット契約であること、②その支払いを滞納すると、指定信用情報機関に記録が残り、新たなクレジットカードの発行やクレジット契約に支障が生じる可能性があることの2点について、政府広報等を通じ注意喚起しました。

③研究会及び委託調査事業の実施

クレジットカード決済の利用が増加していることを踏まえ、経済産業省では研究会を開催し、クレジットカードの安全利用等に関して事業者及び規制当局が今後検討を進めていくべき事項等について、議論を行いました。

また、委託調査事業において、決済代行業者を介在したクレジットカード決済の消費者トラブルについて分析した上で、海外における類似の消費者トラブルへの規制当局や事業者の対応状況等についても調査を行いました。研究会及び委託調査事業の結果は、割賦販売法に関する制度立案や運用に関する基礎資料として活用しています。

イ.多重債務問題解決のための取組

消費者金融市場が拡大する中で、返済能力を超えるような過剰な貸付けが行われるようになりました。その結果、返済のために別の業者からさらに借入れて借金が増え続けたり、借金苦を理由とした自殺者が出たりするなど社会問題としての多重債務問題が深刻化しました。

これを背景とし、「貸し手」に対する所要の規制強化を図るため、いわゆる「総量規制」と「上限金利引下げ」をポイントとする改正貸金業法が2006年12月に成立し、2010年6月18日に完全施行されました。

改正貸金業法の成立を機に、「借り手」に対する総合的な対策を講じるため、政府は、関係大臣からなる「多重債務者対策本部」を設置しました。同本部の下で、2007年に「多重債務問題改善プログラム」122)を取りまとめ、関係府省が一体となって、多重債務者向け相談体制の整備・強化を始めとする関連施策に取り組んでいます。

多重債務者からの相談については、各地方公共団体の多重債務相談窓口、消費生活センターや各地方財務局、関係団体等が受け付けています。

消費者庁では、「地方消費者行政活性化基金」を通じ、弁護士や金融機関等の専門家を講師とした多重債務問題研修の実施等、地方公共団体等が行う多重債務者対策の取組を支援しています。また、国民生活センターでは、消費生活相談員等を対象とした多重債務関連講座を開講し、その能力向上を図っています。

さらに、金融庁及び消費者庁は、相談員向けの「多重債務者相談の手引き」を作成の上、全国の地方公共団体等に配布するとともに、相談員等を対象とする研修を実施しています。

なお、ヤミ金123)の取締りの強化については、ヤミ金融事犯利用口座凍結のための金融機関への情報提供、ヤミ金業者に対する電話警告、携帯電話不正利用防止法に基づく契約者確認等やインターネット上の無登録貸金業広告の削除要請を行っています。このほか、新たな手口とされるクレジットカードショッピング枠の「現金化」124)について、2010年12月以降、防止キャンペーンを行い、消費者に「現金化」を利用しないよう呼びかけています。

【上記取組の実績】

・地方公共団体等の多重債務相談窓口の設置状況:財務局、都道府県では全て設置済み、市区町村では1,653市区町村(全体約95%)で設置済み。

・2012年中におけるヤミ金融事犯の検挙事件数及び検挙人員:325事件、470人(前年比 ▲41事件、▲196人)

・2012年度中のヤミ金融事犯利用口座凍結のための金融機関への情報提供件数:23,786件(前年比+2,780件、+13.2%)

・2012年度中の携帯音声通信事業者への契約者確認件数:5,069件、(前年比+1,386件、+37.6%)

・2012年度中のインターネット上の無登録貸金業広告の削除要請件数:269件(前年比+40件)

ウ.商品先物取引法の適正な執行

経済産業省と農林水産省では、2012年度も引き続き、商品先物取引法125)に基づく立入検査及び監督を実施したほか、犯罪収益移転防止法に基づく立入検査及び監督を実施しました。その結果、商品先物取引に関する苦情や相談の件数は減少傾向にあります。

【商品先物取引に関する苦情受付件数】

2009年度 191件

2010年度 133件

2011年度  73件

2012年度  78件

(※)経済産業省・農林水産省の合算

また、商品先物取引に関する委託者等の実態調査を行い、国内商品先物取引(通常取引、損失限定取引)、外国商品先物取引及び店頭商品デリバティブ取引に関する実態を把握しました。2012年度の調査では、例年の調査項目に加えて、プログラム自動取引や金融商品デリバティブ取引に関する調査を実施し、さらなる実態把握に努めました。なお、調査の結果は、引き続き商品先物取引に関する制度立案や運用のための基礎資料として活用しています。

エ.金融商品取引法の厳正な運用

金融庁では、2011年度に、金融商品取引法上の投資一任業者である投資顧問業者に対して発出した行政処分に関して、証券取引等監視委員会との役割分担を踏まえ、限られた検査・監督リソースの中で、より一層、効率的かつ効果的に、濃淡を付けた検査・監督対応を図る観点から、2012年2月から全ての投資一任業者に対する調査を開始しました。

第1次調査では、投資一任業務を行う全ての金融商品取引業者に対し、第2次調査を優先的に行う投資一任業者を絞り込むために、基礎的な情報を収集することとし、その結果について2012年4月に公表しました。

また、第2次調査では、様々な観点から絞り込んだ業者に対し、より深度のある調査を実施し、その内容について同年9月に公表しました。

このほか、同庁では当該投資顧問業者の事案で明らかとなった問題に対し、金融実務に及ぼす影響を踏まえつつ、実効性ある措置を講ずる観点から、再発防止策を取りまとめて公表しました。これらのうち、内閣府令・監督指針の改正により対応可能な事項については、同年12月に内閣府令等を公布・公表しました。

オ. 消費者信用分野における諸問題への対応

改正貸金業法の施行状況については、同法の完全施行(2010年6月)に際し、金融庁、消費者庁及び法務省において、施行後の状況をフォローするため、関係者ヒアリング等を実施した結果、特定の制度の見直しが必要となるような実態は把握されないとの結論を得ました。

近年、金融庁・財務局・日本貸金業協会における貸金に関する1日あたりの相談・苦情件数が減少してきていること(2010年6月:304件→2012年3月:227件)や、貸金業者から5件以上の無担保無保証借入れの残高がある人数が大きく減少していること(2007年3月:171万人→2013年1月:31万人126))、多重債務を理由とする自殺者数も減少していること(2007年:1,973人(全自殺者数3万3,093人)→2012年:839人(全自殺者数2万7,766人)127))等を踏まえれば、改正貸金業法が多重債務者対策の上で相応の効果があったものと見られます。

そのほか、携帯電話機本体の分割払いに関し、分割払い代金の滞納が及ぼす影響等について、政府広報等を通じて注意喚起しました。(第2部第1章第2節(5)アを参照)

カ. 金融機関における犯罪の未然防止、拡大防止、被害回復

預金口座を利用した悪質な事例が大きな社会問題となっていることを踏まえ、金融庁では、預金口座の不正利用に関する情報について、情報入手先から同意を得ている場合には、明らかに信憑性を欠くと認められる場合を除き、当該口座が開設されている金融機関及び警察当局への情報提供を速やかに実施することとしており、その情報提供件数等については、四半期ごとにホームページにおいて公表しています(2012年度においては、2012年4月、7月、10月、2013年1月に公表)。

振り込め詐欺救済法に基づく預保納付金の具体的使途については、「振り込め詐欺救済法に定める預保納付金を巡る諸課題に関するプロジェクトチーム(PT)」の最終取りまとめ(「預保納付金の具体的な使途について」(2011年8月))において、①犯罪被害者等の子供に対する奨学金貸与、②犯罪被害者等支援団体に対する団体助成の両事業に支出することが決定されました。

これを受けて、両事業の内容を盛り込んだ、「振り込め詐欺救済法第20条第1項に規定する割合及び支出について定める命令」が2012年3月21日に公布、同年4月1日より全面施行されました。両事業の担い手については公募を実施し、同PTにおいて、担い手の公募に参加した者の中から公益財団法人日本財団を当該事業の担い手として決定し、2012年12月18日より、両事業が開始されました。

また、同PTの最終取りまとめにおいて、被害者に対する返金率の向上に向けては、引き続き、振り込め詐欺救済法に定める返金制度の周知徹底を図ることとされました。2011年に引き続き、返金率の向上に向けた取組の一環として、①2012年7月、返金申請を促す観点から、振り込め詐欺救済法施行規則の改正を行い、被害者が返金の申請を迅速に行うことができるよう、申請書様式を記載しやすい簡易な構成に変更、②2012年10月、政府広報において、新聞突き出し広告を行い、広く一般国民に向けた返金制度の周知、③2013年3月、被害者の方が公告を閲覧する際の利便向上のため、預金保険機構のホームページの改善(画面の見やすさ及び検索機能の改善)を実施しました。

なお、返金率は、2011年度の74.3%から、2012年度の78.4%へと上昇しています。

一方で、振り込め詐欺を始めとする特殊詐欺の被害者の多くは高齢者であり、また、被害金の多くはATMや金融機関の窓口を利用して出金又は送金されているのが実態です。これらを踏まえ、警察では、被害を未然に防止するため、金融機関に対し、窓口職員等による高齢者を中心とした顧客に対する声掛けの徹底を要請しています。同時に、声掛け用のチェックリストの金融機関への提供、金融機関と連携した声掛け訓練等を行っており、その結果、声掛けによる特殊詐欺被害の阻止率は年々上昇しています。

さらに、特殊詐欺による被害額を最小限に抑えるため、2011年3月、警察庁から全国銀行協会に、2013年1月には全国信用金庫協会に対し、それぞれの協会加盟金融機関における1日当たりATM利用限度額の初期設定を引き下げるよう要請し、これまでに多くの金融機関でATMの利用限度額が引き下げられています。

このほか、金融庁では、2012事務年度の監督方針に、振り込め詐欺等への対応など、金融機能の不正利用の防止を重点事項として明記し、検証しました。


2012年10月、金融機関から「スキミング128)等により不正に入手したカード情報から偽造キャッシュカードを作製し、他人の預貯金を引き出す手口の犯罪が増加している」との情報が警察に寄せられました。それらの被害の多くで特定の企業が発行する磁気ストライプカードが悪用されていることが判明し、また、それらのカードは誰もが自由にかつ大量に入手できる方法で配布されていたため、警察では、同企業を始めとした関係団体に対して配布方法の見直し等を要請しました。

また、被害状況から暗証番号設定式の貴重品ボックスを設置するゴルフ場等でのスキミングがうかがえたことから、同年12月、関係団体に対して、ゴルフ場における不審者に対する声掛け、受付時の利用客に対する貴重品ボックス利用時の注意喚起(キャッシュカードの暗証番号とは違う番号の設定)等の防犯対策の強化を要請しました。

さらに、銀行ATMのカード挿入口に取り付けられたスキマーや防犯カメラを偽装した暗証番号盗撮用の小型カメラによってカード利用に関する情報を不正に入手する事案が発生したことから、金融機関に対して、ATMコーナーにおける警戒の強化、利用者に対する注意喚起の徹底、ICキャッシュカードの更なる普及促進等について要請しました。

金融庁では、同庁ホームページにて、キャッシュカード利用者に対する注意喚起を継続的に実施しているほか、2012年5月、8月、10月、2013年2月には偽造キャッシュカード等による被害発生状況及び金融機関による補償状況について公表しました。

それとともに、2012年7月、2011年度の偽造キャッシュカード問題等に対する対応状況について、アンケート調査を実施し、取りまとめの上、公表しました。当該調査によると、ICキャッシュカードを導入した金融機関の割合が増加するなど、金融機関による情報セキュリティ向上への取組が着実に実施されています。

加えて、2012事務年度の監督方針に、偽造キャッシュカード等への対応など、金融機能の不正利用の防止を重点事項として明記し、検証しました。


122)

同プログラムでは、「相談窓口の整備・強化」、「セーフティネット貸付の提供」、「金融経済教育の強化」、「ヤミ金の取締り強化」の4つの柱に沿って、取り組むべき施策等がまとめられている。

123)

出資法違反(高金利等)及び貸金業法違反並びに貸金業に関連した詐欺、恐喝、暴行等に係る事犯。

124)

本来、商品やサービスを後払いで購入するために設定されたクレジットカードの「ショッピング枠」を、現金を入手することを目的として利用すること。手口としてはいわゆる「キャッシュバック方式」や「買取屋方式」がある。

125)

「使いやすい」「透明な」「トラブルのない」商品先物市場を実現するため、商品取引所法が改正され、名称も商 品先物取引法に変更された(2009年7月10日公布、2011年1月1日完全施行)。消費者の保護を図るため、取引所 取引に加え取引所外取引や海外商品先物取引について参入規制(許可制)を導入した。また、勧誘を要請しない 一般顧客への訪問・電話による勧誘(不招請勧誘)の原則禁止等についての規定を導入し、行為規制を強化した。

126)

出典:㈱日本信用情報機構

127)

出典:警察庁統計

128)

真正なカードのデータを、スキマー(磁気情報読取装置)を用いて読み取る行為。

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