平成25年版消費者白書

第2部 消費者政策の実施状況

第1章 消費者の権利の尊重と消費者の自立の支援

第2節 消費者の自主的かつ合理的な選択の機会の確保

1 .消費者取引の適正化を図るための施策

( 4 )詐欺的商法等による消費者被害の取締り強化

ア.生活経済事犯への取締り強化

利殖勧誘事犯及び特定商取引等事犯は、被害者の中でも高齢者の割合が非常に高く、その割合は近年増加傾向にあります。警察では、これら国民の生活を脅かす悪質な生活経済事犯に重点を置いた取締りを推進しています。

生活経済事犯を敢行する者は、被害金の振込先として銀行口座を悪用するほか、被害者等を信用させるためにバーチャルオフィス・商業登記を悪用するなどの状況が認められます。

さらに、法により契約締結時に義務付けられている本人確認を履行せずにサービスを提供する悪質な事業者等が存在する状況が認められます。

このような現状を踏まえ、被害回復に向けた犯罪収益の保全、被害拡大防止等のため、口座凍結のための迅速かつ積極的な金融機関への情報提供、金融機関に対する凍結口座名義法人情報の提供、事業者に対する解約要請、悪質な事業者の検挙、犯行助長サービスの悪用実態の継続的な把握・分析等の犯行助長サービス対策を推進しています。

なお、警察が生活経済事犯に利用された疑いがある口座として2012年中に金融機関に状況提供し、凍結を求めた件数は、2万9,684件でした。

さらに、生活経済事犯に関わる新たな罰則を規定する法律が制定・改正された際には、都道府県警察に対して取締り要領等について指導するとともに、都道府県警察の捜査幹部や捜査員を招集して全国規模の研修を2回開催するなどして、捜査力の向上を図っています。

イ.融資保証金詐欺等への取締り強化

融資保証金詐欺や架空請求詐欺等について、都道府県警察では、現に犯行を繰り返す犯行グループに重点を指向し、部門横断的な集中取締体制の構築等により、検挙の徹底を図っています。また、警察庁では、集約した情報を都道府県警察に還元し、都道府県警察による戦略的な取締活動を推進するとともに、都道府県警察間の合同・共同捜査を積極的に推進しています。

架空・他人名義の携帯電話や預貯金口座等が、融資保証金詐欺や架空請求詐欺等に利用されていることから、警察では、これらの犯行ツールの流通を遮断し、犯行グループの手に渡らないようにするため、預貯金口座を売買するなどの、こうした犯罪を助長する犯罪についても、関係法令を駆使して取締りに当たっています。また、犯行に利用された携帯電話の携帯電話事業者に対する契約者確認の求め、金融機関に対する振込先指定口座の凍結依頼等による犯行ツールの無力化等を実施しています。

ウ. 詐欺的商法による新たな消費者被害への対応

未公開株や社債の勧誘等、新たな手口による詐欺的商法に関する勧誘を巡るトラブルが増加したことから、2010年1月に、消費者庁、警察庁、金融庁等の関係省庁からなる「新たな手口による詐欺的商法に関する対策チーム」を設置し、被害の発生・拡大防止に向けた対策を検討しました。そして、「情報集約から取締までを一貫的かつ迅速に行う体制の構築」、「注意喚起、普及啓発の強化」、「被害の抑止・回復の迅速化に向けた制度の運用・整備のあり方の検討」を盛り込んだ対応策を取りまとめ、関係省庁が連携し、以下のとおり取り組んでいます。

①情報集約・共有

2011年6月に、警察庁、金融庁、消費者庁等の関係省庁からなる消費生活侵害事犯対策ワーキングチームにおいて、「消費生活侵害事犯の被害が疑われる相談情報の警察への提供について」を申し合わせ、関係省庁等、地方公共団体、警察間で互いに関係情報を共有するなど連携を深めています。

警察庁では、金融庁や消費者庁等の行政機関から利殖勧誘事犯被害が疑われる相談情報の提供を受け、当該情報を関係都道府県警察に提供し、犯罪利用口座凍結及び被疑者検挙に活用しています。

証券取引等監視委員会では、国民生活センターや日本証券業協会コールセンターから、両センターに寄せられた無登録業者等の情報(3万7,591件)を収集し分析しました。また、金融庁金融サービス利用者相談室や証券取引等監視委員会事務局市場分析審査課に寄せられた無登録業者等の情報(1万4,702件)を収集し分析しました。なお、金融庁でも、同様の情報を入手し、活用しています。

②業者への対応

消費者庁では、消費者安全法に基づき、社名公表を伴う注意喚起を5回実施し(2012年度)、消費者への注意を呼びかけました。

警察では、詐欺的商法による新たな消費者被害の事案に対する取締りを集中的に行い、未公開株取引や社債取引等をめぐる事件で被疑者を検挙しています。

また、この種の事犯等を敢行する者は、被害金の振込先として銀行口座を利用するほか、被害者等を信用させるためにバーチャルオフィス・商業登記を利用するなどの状況が認められることから、利用されたサービスの実態把握、口座凍結のための迅速かつ積極的な金融機関への情報提供、金融機関に対する凍結口座名義法人情報の提供、事業者に対する解約要請等を推進しています。

さらに、この種の事案等に利用される携帯電話や預貯金口座の不正な流通を防止するため、関係法令を駆使した取締りを推進し、口座詐欺・盗品等譲受け、携帯電話端末詐欺、犯罪収益移転防止法違反及び携帯音声通信事業者による契約者等の本人確認等及び携帯音声通信役務の不正な利用の防止に関する法律違反を検挙しています。

また、金融庁では、無登録で金融商品取引業を行っていた137事業者、及び虚偽告知や顧客資産の流用等の法令違反等が認められた適格機関投資家等特例業務届出者20社について、警告書を発出しました。あわせて、金融庁と証券取引等監視委員会は、これらの業者について、社名等を公表しました(2012年度)。

このほか、証券取引等監視委員会では、悪質なファンド業者(適格機関投資家等特例業務届出者)による金融商品取引法違反行為に係る裁判所への差止命令の申立て(1件)を実施しました(2012年度)。

③注意喚起・普及啓発

消費者庁、警察庁、金融庁では、政府広報を活用した注意喚起や地方公共団体や関係機関等の協力を得た普及啓発活動を展開しています。2012年度には、消費者庁では、「こんな勧誘にはご用心」、金融庁では「怪しい金融商品への投資勧誘にご用心」と題し、政府広報(ラジオ番組)を通じて、様々な手口による詐欺的商法への注意を呼びかけました。

また、近年、高齢者を狙った消費者トラブルが増加していることを受け、消費者庁、警察庁及び金融庁により、政府広報(テレビCM、新聞広告、インターネット、ポスター「未然かるた」等)を通じた「高齢者の消費者トラブル」未然防止に係る注意喚起を実施しました(2012年10月~)。

④制度の運用・整備の在り方の検討

金融商品取引法上の無登録業者が非上場の株券等の売付け等を行った場合には、その売買契約を原則として無効とするルールの創設、無登録業者による広告・勧誘行為の禁止、無登録業者に対する罰則の引上げ等を盛り込んだ改正金融商品取引法が施行されています(罰則引上げは2011年6月、その他の項目は同年11月)。

また、適格機関投資家等特例業務119)の要件を充足しないファンドを運営するような悪質な業者自体を排除すべく、届出記載事項の追加等の法令改正による規制強化を行い、併せて金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針の一部改正により、届出受理時のチェック項目の追加等の監督上の着眼点を整備し、2012年4月から施行されました。

さらに、既存の法令で対応困難な財産被害事案について、事業者に対する措置等を設けることにより、被害の発生・拡大を防止することを目的とする消費者安全法の一部を改正する法律が2012年8月に成立し、2013年4月1日から施行されました。

エ. CO2排出権取引への投資に係る諸問題への対応

CO2排出権取引に関する相談の多くは、CFD120)(差金決済)取引の複雑な仕組みやリスクを十分に理解できないまま、必ず儲かる、元本を保証する、環境問題に貢献できるなどといった勧誘により契約してしまい、多額の損失を被ったというものです。

2011年1月頃から相談が寄せられ始め、現在は月に数十件の相談を受けるまでに急増しています。この状況を受け、国民生活センターは、同年9月に相談事例を踏まえた手口公表を行いました。また、2012年10月の政府広報による高齢者のトラブル未然防止の啓発では、消費生活にひそむ危険の手口の一つとして紹介しています。

また、CFD取引に係るサービスの提供等、CO2排出権の取引の形態によっては、特定商取引法の規制対象となる場合があり、消費者庁では2012年6月に同法違反で取引業者を行政処分するなど、厳格な法執行を行っています。

さらに、消費者庁、金融庁、経済産業省、環境庁の4省庁では、CO2排出権に関係する制度や消費者からの相談の実態、類似の取引に対する規制の状況等について情報・意見を交換する場を設けて、この問題に対して連携して取り組んでいます。

2013年3月には、警察庁を含む5省庁でリーフレットを作成し、被害の多い高齢者を中心とした一般消費者に向けた意識啓発を行いました。

しかし、全国の消費生活センターに寄せられる相談件数は、2010年度には57件であったものが、2011年度には652件、2012年度には792件と急増していることから、引き続き、様々な方法で消費者に意識啓発を継続するとともに、CO2排出権取引に関係する制度や消費者被害の実態等を踏まえ、効果的な対策を検討しています。

オ.「マルチ取引」への対応

いわゆる「マルチ取引」については、法令上の定義はありませんが、販売組織の加盟者が消費者を組織に加入させ、さらにその消費者が別の消費者を組織に加入させることを次々と行うことにより組織をピラミッド式に拡大していく商法です。

一般的に、販売員が特殊な一部の成功例を引き合いにして、あたかも多大な利益が容易に得られるかのように新たな消費者を信じ込ませたり、友人や親戚等の身近な人の親しい関係を利用して販売組織に加盟させようとしたりする行為等が、トラブルの原因となることが多くなっています。

「マルチ取引」といっても態様は様々で、一律に規制されているわけではありませんが、こうしたピラミッド構造の取引はトラブルが多い形態であることから、例えば商品等を介在しない取引については「無限連鎖講の防止に関する法律」で禁止されており121)、商品等を介在する場合も、特定商取引法において、「連鎖販売取引」に該当するものについて、勧誘時の禁止行為や書面交付義務等の規制を課し、民事ルールとして、書面交付後20日間のクーリング・オフ(無条件解約)を定めています。

消費者庁設置後2012年度末までに、特定商取引法に違反する行為を行ったとして、連鎖販売取引を行っていた7つの事業者に対し、業務停止命令等の行政処分を行っています。

他方で、トラブルを未然に防止するために、2012年1月~3月に、PIO-NETに寄せられた相談の実態や海外における規制状況などの調査(委託)を実施し、その結果等を踏まえ、消費者庁では同年4月17日に「いわゆるマルチ取引の被害に遭わないための5つのポイント」を公表し、消費者に注意を促しました。その公表内容を踏まえ、同年7月12日に、注意喚起リーフレット「マルチ商品にご用心! ! 」を国民生活センターと連名で作成し、各地の消費生活センターを始め、大学等の教育関係機関、社会福祉協議会等の高齢者関係団体にも配布し、消費者に効果的な注意喚起を行いました。


119)

通常、ファンド業務(ファンドの運用や販売勧誘)を行う場合には、金融商品取引法の厳格な登録が必要だが、 一定の要件を満たすことにより、簡易な届出のみで、ファンド業務を行うことができる。

120)

Contract For Difference の略。差金決済取引とは、現物の受け渡しをせず、売買の利益や損失のみを決済する 取引。市場価格を指標に、証券会社など取扱業者と顧客が相対取引を行い、買った時の価格より高く売れば差金 をもらい、低く売れば差金を支払う。

121)

商品等の取引の介在があっても、実質的に金品の配当組織と認められるものは「無限連鎖講の防止に関する法律」 の禁止対象となり得る。

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