平成25年版消費者白書

第2部 消費者政策の実施状況

第1章 消費者の権利の尊重と消費者の自立の支援

第1節 消費者の安全・安心の確保

3 .食の安全・安心の確保

( 1 )食品の安全性の確保に関する取組

ア. 食品の安全性の確保に関する基本的事項の決定

食品安全基本法第21条第1項に規定する基本的事項(2004年1月16日閣議決定)とは、食品安全行政に関して講じられる各般の措置についての具体的な推進方策を定めたものです。

本基本的事項については、2004年の閣議決定以降の食品安全をめぐる状況の変化や、消費者庁の設置に伴う食品安全行政に関する体制の変更等に応じた見直しを行いました(2012年6月29日閣議決定)。具体的には、①いわゆる「すき間事案」については、消費者庁が消費者安全法に基づき措置すること、②リスクコミュニケーションに係る関係府省の事務の調整を消費者庁が実施すること、③食品事故に係る緊急対策本部は、消費者担当大臣が設置することなどについて新たに記述され、消費者庁が、食品安全に関わる行政機関として本基本的事項において明確に位置付けられました。

イ.食品の安全性に関するリスク評価

食品安全基本法では、食品のリスクが存在することを前提として、これをコントロールしていくという考え方の下、「リスクアナリシス」105)という考え方が導入されています。また、同法に基づき、食品の安全性について、科学的知見に基づいて中立公正に「リスク評価」を行う機関として、2003年7月、内閣府に食品安全委員会が設けられ、人の健康に悪影響を及ぼすおそれのあるものを含む食品を摂取することによって、どの位の確率で、どの程度人の健康に悪影響が生じるかを科学的に評価しています。

食品安全委員会では、評価体制の強化を図るとともに、2012年11月には、欧州食品安全機関(EFSA106))との第1回定期会合を開催し連携強化を図るなど、リスク評価機関としての機能強化に努めています。なお、2013年3月31日時点で、リスク管理機関からの要請や自ら行うことを決めた1,908件の事案のうち、1,340件の評価を終えています。

ウ. 食品の安全性の向上に関するリスク管理

①食品の安全性に関するリスク管理

国産農畜水産物や食品の安全性を向上させ、健康への悪影響を未然に防止するためには、生産から消費にわたってリスク管理に取り組むことが不可欠です。

農林水産省では、まず、食品が安全であるかどうか、安全性を向上させる措置をとる必要があるかどうかを知るために、食品安全に関する情報を収集・分析し、優先的にリスク管理の対象とする有害化学物質・有害微生物を決定した上で、農畜水産物・食品中の含有実態調査を行っています。その上で、これらの実態調査の結果を解析し、必要がある場合には、低減対策を検討することとしています。これらの各過程において、生産者、事業者、消費者、地方公共団体等と情報・意見の交換を行い、必要に応じそれらの情報・意見をリスク管理措置に反映させています。

2012年度には、有害化学物質について、2003年度から2010年度に実施し公表してきた含有実態調査の結果を一冊のデータ集として取りまとめ、広く配布しました。また、有害微生物の汚染実態調査等の結果を基に、牛肉、鶏肉に加え、鶏卵の生産農場への食中毒菌の侵入やまん延を防ぐ対策を取りまとめた生産者及び指導者向けのハンドブックを作成・公表し、生産現場への普及を始めました。

厚生労働省では、飲食に起因する衛生上の危害の発生に関するリスク管理機関として、食品衛生法に基づき、食品に残留する農薬、汚染物質や食品に使用する添加物など、食品や添加物等の規格基準の設定を行っています。これらは、内閣府に設置された食品安全委員会が科学的知見に基づいて行うリスク評価の結果に基づき、食品事業者や消費者等関係者の意見等を踏まえて実施しているものです。例えば、食品添加物については、その食品添加物が人の健康を損なうおそれのない場合に限って使用を認めた上で、品質の安定したものが流通するよう、純度や成分について成分規格を定め、過剰摂取による健康被害が生じないよう、食品ごとに使用基準を定めるなどしています。さらに、実際に市場から仕入れた食品中の添加物の種類と量を検査し、国民一人当たりの摂取量を調査するなど、継続的な安全確保に努めています。

また、食品の安全性を確保するためには、厚生労働省や都道府県等関係行政機関が連携して、規格基準の遵守等に関する監視指導を実施することが重要です。これを重点的・効率的かつ効果的なものとするため、厚生労働省では「食品衛生に関する監視指導の実施に関する指針」を定め、輸入時については同省が、国内流通時については各都道府県等が、それぞれ関係者の意見を踏まえつつ、毎年度、監視指導計画を作成・公表の上、監視指導を実施しています。

②HACCP導入の促進

食品の安全と消費者の信頼の確保を図るため、生産から消費に至るフードチェーン全体において安全管理の取組強化が求められている中、農林水産省では食品の安全性の向上と品質管理の徹底等を目的に、問題のある製品の出荷を未然に防止することができるHACCP107)の普及・導入促進のための施策を実施しています。

具体的には、食品製造業界全体にHACCPの導入を促進するため、厚生労働省と共管の「食品の製造過程の管理の高度化に関する臨時措置法」が1998年5月に成立し、以降、5年ごとに延長されています。同法に基づく計画認定を受けると、これに必要な施設の整備等に対して、株式会社日本政策金融公庫から長期低利融資が受けられます。同法の有効期限が、2013年6月30日に到来しますが、食品製造業界の多くを占める中小事業者によるHACCPの導入が伸び悩む中で、その導入を引き続き促進するため、同法の延長や支援対象の拡大等を内容とする一部改正法案を2013年3月15日に国会に提出しました。

また、2003年度以降、予算措置により、HACCP導入促進のための研修会等の実施、低コストなHACCP導入の推進、専門家による現地指導の取組等への支援を実施し、特に食品製造事業者の中小規模層におけるHACCPの導入を促進しています。

③農業生産工程管理の推進

農業生産工程管理(以下「GAP108)」という。)とは、農業生産活動を行う上で必要な点検項目を関係法令等に則して定め、これに沿って、各工程の正確な実施、記録、点検及び評価による持続的な改善を行う活動のことです。

我が国におけるGAPの現状を見ると、国内に様々なGAPが存在するとともに、科学的知見や消費者・実需者のニーズを踏まえた取組への対応も十分に進んでいない状況にあることから、農林水産省では2010年4月に、高度な取組内容を含む先進的なGAPの共通基盤として、「農業生産工程管理(GAP)の共通基盤に関するガイドライン」を策定しました。

本ガイドラインについては、農業生産に関連する指針の制定に伴い、4度の改定(2011年3月、6月、8月、2012年3月)を行うとともに、ブロック説明会等を通じて周知しています。

また、産地における更なる取組の拡大と内容の高度化を図るため、消費・安全対策交付金等を活用し、指導者の育成や産地での導入等に対する支援を実施しています。

④輸入食品の安全性の確保

海外からの食品を多く輸入する我が国では、近年、輸入食品に対する安全性についても国内の関心は高まっています。このような関心の高まりを受け、政府は、主要食料輸入国や食の安全問題に関わりの深い国際機関等を所管する在外公館を中心に「食の安全担当官」を設置するなど、個別事例への対応や各国政府・国際機関との連絡体制の強化、さらには、国内関係府省・機関における連絡体制の強化に取り組んでいます。

また、食品流通のグローバル化の進展、消費者ニーズの多様化などを背景に、輸入食品の届出件数は年々増加しています。増加する輸入食品の安全性を確保するため、厚生労働省は、年度ごとに「輸入食品監視指導計画」を策定し、重点的、効率的かつ効果的な監視指導の実施に取り組んでいます。

この計画では、輸出国、輸入時(水際)、国内流通時の3段階で厚生労働省本省、検疫所、都道府県等の関係行政機関が対策を講じることとしています。

輸出国での安全対策として、日本への輸出食品について食品衛生法違反が確認された場合は、輸出国政府等に対して原因の究明及び再発防止対策の確立を要請するとともに、二国間協議を通じて生産等の段階での安全管理の実施、監視体制の強化、輸出前検査の実施等の推進を図っています。また、必要に応じて担当官を派遣し、輸出国の安全対策の調査等を実施しており、中国、カナダ等の現地日本大使館に「食の安全担当官」を配置するとともに、2012年度は、豪州、エクアドル等に担当官を派遣し食品安全に関する情報収集等を行いました。引き続き、二国間協議及び現地調査を通じて輸出国段階の安全対策を検証するほか、計画的に主要な輸出国の安全管理体制に関する情報収集の推進に努めます。

輸入時の対策としては、多種多様な輸入食品を幅広く監視するため、輸入港や空港に設置された検疫所が年間計画に基づくモニタリング検査を実施しており、検査の結果、違反の可能性が高いと見込まれる輸入食品については、輸入の都度、輸入者に対して検査命令を実施しています。また、検疫所の食品衛生監視員の増員(2012年度は6人増員)や検査機器の整備等、輸入食品の安全性確保体制の強化を図っています。

国内流通時の対策としては、厚生労働省本省、検疫所等と連携をとりつつ、都道府県等が国内流通品としての輸入食品に対する監視指導を行っており、違反食品が確認された際には、速やかに厚生労働省に報告を行い、輸入時監視の強化(モニタリング検査や検査命令等)を図っています。

エ. 食品の安全性に関するリスクコミュニケーション

2011年3月11日の東日本大震災に伴って発生した東京電力福島第一原子力発電所事故による環境中への放射性物質の放出を契機として、食の安全性に関するリスクコミュニケーションの内容は大きく変わり、食品中の放射性物質に関する対応を緊急にかつ中心的に行うこととなりました。

このうち、関係府省が連携した取組として、2011年度には食品安全委員会と厚生労働省が共催し、農林水産省も参画した説明会を7回行いました。2012年6月には、食品安全基本法第21条第1項に定める基本的事項の改定を閣議決定し、消費者庁が食品安全行政を実施する機関として明確に位置付けられ、リスクコミュニケーションに係る関係府省庁等の事務の調整を担うこととされました。

これを受け、これまで以上に関係府省庁等の連携を図ることとし、消費者庁、食品安全委員会、厚生労働省及び農林水産省(以下「4省庁」という。)が共催し、食品中の放射性物質に関する正しい情報提供に重点を置いた比較的大規模な会場でのシンポジウム形式によるリスクコミュニケーションを各地の県庁所在地等で27回開催するとともに、3種類のポスター各2万枚、リーフレット各92万部を作成し、公共施設や店頭等における消費者への情報提供として全国で配布しました。

また、関係府省庁等が連携した食品の安全性に関するリスクコミュニケーションの取組として、2012年度には、食品安全委員会、厚生労働省及び消費者庁共催によるBSE(牛海綿状脳症)対策の見直しに関する説明会を2回、厚生労働省と消費者庁の共催による輸入食品の安全性確保に関する意見交換会を3回、それぞれ開催しました。

なお、関係府省庁等ごとに行った食品の安全性に関するリスクコミュニケーションの取組は、以下のとおりです。

食品安全委員会では、東日本大震災への対応として、「放射性物質に関する緊急とりまとめ」(2011年3月)、「食品中に含まれる放射性物質」に関する評価書(2011年10月)について、評価書の概要やQ&Aと併せてホームページで公表しました。また、地方公共団体との共催による意見交換会等を、2011年度には14回、2012年度には8回開催しました。さらに、地方公共団体等で開催された意見交換会等への講師の派遣を行いました。

そのほか、2012年度には、農薬、食品添加物、遺伝子組換え食品、食肉の生食の食品健康影響評価等に係る意見交換会を17回開催するとともに、地方公共団体等で開催された意見交換会への講師の派遣を行いました。また、ホームページ等を通じて食品の安全性に関する情報提供を行いました。

厚生労働省では、食品中の放射性物質対策以外の食品の安全性に関する様々なテーマについても、説明会等を2011年度には8回、2012年度には2回主催するとともに、地方公共団体等での意見交換会への講師の派遣を行いました。また、2012年4月1日から施行された食品中の放射性物質の基準値についてのリーフレットや説明会の資料等を含む開催概要を同省のホームページに掲載するなど、消費者の食品の安全性に関する知識と理解を図るための情報提供を行いました。さらに、平日は毎日、都道府県等が実施している食品中の放射性物質の検査結果を取りまとめ、ホームページで公表し、消費者への迅速な情報提供を行いました。そのほか、牛レバーの生食、真空パック食品のボツリヌス菌、ノロウイルスによる食中毒についての注意喚起のリーフレットを作成し、ホームページに掲載するなど科学的知見に基づいた情報の提供や注意喚起を行いました。

農林水産省では、消費者の視点に立った農林水産行政を進めるため、消費者団体との懇談会等を開催するとともに、食品の安全性等に関する正しい知識の普及のために、本省及び各地方農政局等において各種説明会、出張講座等の実施や講師の派遣を行っています。

また、食品中の放射性物質について、正確な情報提供を通じて正しい知識の普及を図るために、4省庁共催による説明会の開催のほか、消費者団体や食品製造・流通業者等に対して、2011年度には25回、2012年度には111回の説明会を開催するとともに、ホームページ等を通じた分かりやすい情報の発信を行いました。

さらに、東日本大震災による被災地やその周辺地域で生産・製造されている農林水産物・食品を積極的に消費することで被災地等の復興を応援するため、「食べて応援しよう!」のキャッチフレーズの下、食品産業事業者、地方公共団体等の協力を得て、被災地産の農産物等の販売フェアや各府省庁の食堂・売店、社内食堂での積極的利用等の取組を推進しています。

2012年度には、農林水産省だけでなく、経済産業省、総務省、国土交通省、防衛省からも、関連業界団体に対し、被災地産の農産物等の積極的な消費を働きかけてきました。その結果、「食べて応援しよう!」に賛同した取組は542件(2011年4月~2013年3月)となっています。このうち、被災地産食品販売フェア等は405件、社内食堂等での食材利用は72件、セミナー・シンポジウムの開催等は65件となっています。

このほか、出先機関を含めた各府省庁の食堂・売店(全調査対象1,303か所)のうち、632か所において、被災地で生産された農産物等が利用・販売されました。米については5,232トン(総利用・販売量の38%に相当)のうち、福島県産米1,445トンを利用・販売しました。(2012年10月末時点。)このほか、最近の事例としては、農林水産省内の職員食堂で、2013年1月~2013年3月まで、福島県産米を始めとする被災地産食品を利用したメニューを提供しました。

消費者庁では、2011年度に地域の消費者団体等と連携して、「食品と放射能」をテーマとしたリスクコミュニケーション等を45回、「健康食品による健康被害」について意見交換会を3回それぞれ開催しました。

また、このほかに食品分野を含む、注意喚起を要すると考えられる消費者事故例等を取り上げた安全啓発資料等について、前年度の実施状況を踏まえて見直すとともに、それらを活用した講座を全国30か所で実施しました。

2012年度の食品中の放射性物質に関する取組では、地方公共団体との連携により、職員が講師を務める小規模な双方向対話型集会の開催(福島県(県内46か所)、福島市(市内17か所)、二本松市(市内4か所)等)等、開催ニーズに則したリスクコミュニケーション109)に取り組み、全国148か所で開催しました。

さらに、2011年度以降、食品・水道水の検査結果や、出荷・摂取制限の範囲など、正確な情報をホームページで発信しているほか、放射性物質や、食品等の安全の問題を分かりやすく説明する冊子「食品と放射能Q&A」を作成(2011年5月30日~適宜改訂、2012年8月31日現在第7版)し、ホームページで公表するとともに、配付しています。

このほか、消費者自身が放射性物質を測定したいというニーズに基づき、地方公共団体が測定事業を実施する際に放射性物質検査機器を貸与する取組では、2012年度に全国278の地方公共団体に対して、392台の配備を行いました。また、2013年2月には、被災地域及び被災地産品の主要仕向け先の都市圏の消費者約5千人を対象として、インターネットを通じた消費者意識の実態調査を行いました。今後、その結果を各種取組に活用することとしています。


105)

リスクアナリシスとは、①食品中に含まれる特定の物質等が人の健康に及ぼす影響を科学的に評価する「リスク評価」と、②リスク評価の結果に基づいて国民の食生活等の状況を考慮して基準の設定や規制等の対応を行う「リスク管理」、③これらの情報を共有して、消費者、事業者、行政機関等が情報・意見交換する「リスクコミュニケーション」の3要素からなる考え方のこと。

106)

European Food Safety Authority の略。

107)

食品衛生管理システムの一つ。Hazard Analysis and Critical Control Pointの頭文字をとったもので、危害要因分析重要管理点と訳される。原料受入から最終製品までの各工程ごとに、微生物による汚染、金属の混入などの危害を分析(危害要因の分析)した上で、危害の防止につながる特に重要な工程(重要管理点)を継続的に監視・記録する工程管理のシステム。

108)

Good Agricultural Practice の略。

109)

詳細は参考資料を参照。

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