平成25年版消費者白書

コラム13

消費者市民社会

地球環境、エネルギー・資源問題など、現代社会には消費をめぐる社会問題が山積しています。そのような中では、消費者は、単なるサービスの受け手としてではなく、消費を個人の欲求を満たすものとのみ捉えず、社会、経済、環境などに消費が与える影響を考えて商品・サービスを選ぶなど、公正で持続可能な発展に貢献するような消費行動をとることが求められています。「消費者市民社会」とは、このように消費者一人一人が、自分だけでなく周りの人々や、将来生まれる人々の状況、内外の社会経済情勢や地球環境にまで思いを馳せて生活し、社会の発展と改善に積極的に参加する社会を意味しています。

この「消費者市民社会」の概念は、欧米、殊に消費者保護のレベルが高い国として評価されている北欧諸国を中心として議論がなされるようになり、消費者が選択行動を通じて社会に影響を与えるという意味において、既に1980年代の消費者教育についての国内外の議論の中で、消費者教育の要素として示されるようになりました。我が国では、2008年の「国民生活白書」や「消費者行政推進基本計画」中で政府の文書としても「消費者市民社会」の用語が使用されるようになった頃から、消費者教育の分野において盛んに議論されるようになりました。こうした議論も踏まえて2012年に成立した消費者教育推進法では、「消費者市民社会」は、「消費者が、個々の消費者の特性及び消費生活の多様性を相互に尊重しつつ、自らの消費生活に関する行動が現在及び将来の世代にわたって内外の社会経済情勢及び地球環境に影響を及ぼし得るものであることを自覚して、公正かつ持続可能な社会の形成に積極的に参画する社会」と定義され、同法では「消費者が消費者市民社会を構成する一員として主体的に消費者市民社会の形成に参画し、その発展に寄与することができるよう、その育成を積極的に支援することを旨として行われなければならない」ことが基本理念として掲げられています。

消費者市民社会においては、消費者が持続可能な社会の形成に積極的に参画することが求められ、そのためには消費者教育を通じて実際の場や行動で学ぶことが重要です。ノルウェー・ヘッドマーク大学を拠点とする消費者教育に関する学際的ネットワークであるCCN(Consumer Citizen Network)のビクトリア・トーレセン氏(引用文当時)は、次のような事例を紹介してその重要性を語っています。

例えば、ある学校で人間の尊厳について話をしました。彼らの町には洋服工場があるので、生徒たちは自分たちが着ている洋服がどのようにつくられるのかというのを調べました。その中で彼らはその洋服工場が使用している綿が、ロシアにあるウラル山脈の向こうから来ているということを発見しました。そこで子どもたちは、そのウラル山脈の向こうの地域の子どもたちとインターネットを通じて話をし始めました。そして、その地域に住んでいる子どもたちの半分が、病気、癌になっているということに気づくのです。その子どもたちがなぜ病気になっているのかという理由は、良質の綿が取れるように散布される化学物質である殺虫剤によっての病気だということに気づきます。

そこで子どもたちは工場に行って、「他の子どもたちを病気にするような洋服は着たくない」と言ったのです。以前でしたら単に反対して洋服を買わないという運動をしたものですけれども、今それをやってしまうと、その子どもたちの親たちが仕事を失ってしまうことにつながります。

そこで会社は、その子どもたちを招いて、シャツを作る新しい原材料の仕入れ先を見つける作業を手伝ってもらいました。こうして今では、その会社では綿を使わず、ペルーで殺虫剤を使わずに生産されている他の材料を使ってシャツを作っています。

ですから、子どもたちの行動が状況を変化させたのです。
(「ビクトリア・トーレセン氏講演会報告書」(2010年日本弁護士連合会)より抜粋)

私たち消費者一人一人には、このような消費者市民社会の構築に向けて、消費が持つ影響力を理解し、持続可能な消費を実践し、主体的に社会参画・協働していくことが求められています。

ページ上部へ


消費者庁 携帯サイト
携帯サイトQRコード